(株)ゲームテック製『ネオファミ(NEOFAMI)』を調べた記録と感想です。以下、大事な注意点。
手持ちのソフトウェアを動作試験。調べたポイントは、
以下、特記なければソフトウェアが動作して、なおかつ問題が見つからなかったという意味。ただし一本のソフトにつき1分くらいしか調べていません。「とりあえず動作した例があるソフトウェアのリスト」くらいに見てください。ファミコンカセットやネオファミのバージョン違いで結果が変わることも考えられます。また、このページで不具合があるとされていても、それがネオファミに原因があるとは限りません。
ソフト名の前に■がついているのは、ディスクシステムのソフト。ついていないのはROMカセット。何か問題があれば、ソフト名のあとに(注:)で記述。しかしネオファミでディスクシステムは使えないと思ってください。
リセットするとフリーズする。メーカサイトの記述どおり。
電源投入しても起動しない。電源投入後にリセットすると動作する。
画面上の一部がキャラ化けする。ディスク版とカセット版とで状況が違う。
ソフトウェアによっては、電源OFFの直後に電源ONすると起動しない。例えば『ドラゴンクエストⅢ』。対策は、電源OFFしてから10秒間は電源ONにしないこと。この不具合に関しては上記リストに記述していません。
光線銃や3Dシステムをつなげる15P拡張端子が無い。当然ながらこれらの周辺機器は使えない。不具合ではなく仕様。説明書に明記してあります。
一応は動作しますが、使ってはいけません。ネオファミの設計は、ディスクシステムを明らかに無視しています。事故の原因になります。
説明書にはファミリーコンピュータディスクシステムについての記述がありません。しかし「この製品は一部のゲームでは動作しない場合があります。」
「この製品に付属している専用コントローラ以外の周辺機器は接続できません。」
「この製品は、FC専用周辺機器は使用できません。それらを使用するゲームには対応していません。」
と明記されている。もっと言えば「FC用ゲーム互換機」
とあるだけで、どこにも「ファミコン」とは書いていない。仮にファミコンソフトが一本も動作しなかろうが、ファミコンカセットが壊れようが、文句は言えない。ゲームテックさん、FCって何ですか。
ネオファミ専用ACアダプタ同梱。日本国内の屋内専用。ACアダプタに書かれている仕様は以下。
- 定格電圧
AC100V
- 定格周波数
50/60Hz
- 定格入力容量
7VA
- 定格出力電圧
DC9V
- 定格2次電流
300mA
ACアダプタのケーブル長は、説明書には1.5mと書かれています。実測は191cm。コネクタは昔ながらのDCプラグ。極性は内側がマイナスで外側がプラス。
ネオファミ専用コントロールパッド二個付属。任天堂のファミリーコンピュータ用周辺機器は使えません。ケーブルの長さは説明書には1.5mと記述。測ってみると152cm。Aボタン、Bボタンに連射機能標準装備。スローボタンもある。でもこれは単なるスタートボタンの連射。
映像はコンポジットビデオのみ。音声はモノラル(1ch)。接続端子は一般的な黄色と白色のRCAピンジャック。AV接続ケーブル付属。ケーブル長1.5m。説明書には「付属のAV接続ケーブルを接続してご使用ください」
とある。きょう体の形状の都合上、付属品以外のビデオケーブルは接続できないことがあります。
付属AVケーブルを念のためテスタで測定。抵抗が入っているということもなく、ごくありきたりなケーブルのようです。
電源LEDがついている。色は青。(2005年11月25日追記:製品によっては赤色LED)
リセットするとゲームソフトによってはフリーズ。またリセットボタンを押している間、規格から非常に大きくずれた映像信号が出力されます。
音量が大きいと音割れする。またファミコンと比べると、音源どうしの音量バランスが崩れている。
保証期間が一年もある。なかなかご立派。でもこうも書かれている。
「この保証の範囲は、お買い上げ頂いた製品の修理または交換を最大の限度とします。製品の使用上で生じた直接または間接の損害については、弊社は一切その責任を負いかねます。」
私個人の判断ですが、重要な使用上の注意を。
説明書にも強調して明記してあるように、ネオファミ専用ACアダプタ以外のACアダプタを使ってはいけません。ネオファミ用と同じ、出力電圧9VのACアダプタであってもです。例えば任天堂のファミコン・スーパーファミコン・バーチャルボーイ用ACアダプタHVC-002や、セガのメガドライブ等用のSA-160Aは不適当です。これらはネオファミに簡単に接続可能で、実際にネオファミが動作します。しかしネオファミの過剰な発熱と故障、そして事故に繋がります。特に専用品以外のACアダプタとディスクシステムを同時に使用するのは危険です。
ネオファミに限ったことではありませんが、使用しないときはACアダプタをコンセントから取り外す。これだけは絶対に守らねばなりません。
説明書に「各機器の接続はネオファミ本体、テレビともに電源を切った状態で行ってください」
とある。これは厳密に守る必要があります。
ビデオ信号が映像信号の規格から大きく外れている。正常な映像が映らない可能性があります。詳細は下の回路図と測定を参照。
もしファミコンカセットが壊れても、誰にも文句は言えません。ディスクシステムや大切なファミコンカセットをネオファミに接続するのは、避けた方が無難です。
ファミコンカセットの場合、カートリッジコネクタの接触不良が問題になります。これに関しては任天堂ホームページに詳しく記述があります。安全なのは任天堂のゲームボーイクリーニングキット(DMG-08)を使うこと。ゲームボーイカセット用のクリーニングスティックは、ファミコンカセットにも使えます。ネオファミ側コネクタの掃除はできませんが、その必要は無いでしょう。
ファミコンカセットに関しては、色々と問題のある掃除方法が流布しています。例えば「接点復活剤を塗る」「カセットを何度も抜き差しする」「鉛筆で接点をこする」「カセットを斜めに刺す」。これらは全て駄目です。
ネオファミの回路は、殆どが怪しげな黒いカタマリの中に閉じ込められています。それでも部分的に回路図を起こしてみました。ただし私はエンジニアではありません(特にディジタル系は全然わかりません)。間違いが多々あるであろうという前提でご覧ください。
ACアダプタは分解イコール破壊行為なので、中を見ていません。おそらくファミコンのACアダプタと同種です。基板上の電源回路は以下。
ACアダプタの出力電圧は、無負荷時に実測で約13.2V。ネオファミ本体の消費電流は実測で約110mA。ビデオケーブルを繋がず、コントローラのスローモードOFFなら70mA程度。7805に放熱器はついていませんでした。消費電力は動作させるソフトウェアによっても変わります。特にディスクシステムのRAMアダプタは注意です。消費電流300mA以上はみる必要があります。ネオファミ専用ACアダプタでディスクシステムを使うと、7805の動作電圧ぎりぎりになります。
電源表示ランプのLED。青色発光ダイオードのVfは実測で3.16V。
発振回路というか、発振回路の一部。あやしげな黒い塊から上記の回路に繋がっていました。C3は未実装。
回路図らしいものを書けない回路その1。殆どが黒い塊に閉じ込められています。周辺部品はLED1個、抵抗1k,22k、スイッチングダイオード(?)1個、2000pFのコンデンサ1個。ネオファミからの配線は電源とGNDと信号線3本。
回路図らしいものを書けない回路その2。黒い塊から音声信号が一本の配線で出力されて、カートリッジコネクタの45番と46番に直結。45番と46番は思い切りショート。そののち1μFのアルミ電解(C9)を通して出力。
リセット端子が黒塊から出て、GNDに落とすとリセット。
黒塊から半導体に直結されてます。品種はおそらくNPNトランジスタのS8050。R3は必須です。R3がもし無ければ、ビデオ信号が現れません。
観測ポイント① | 観測ポイント② |
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負荷に75Ωの抵抗を繋いで観測。観測ポイントはトランジスタのベース端子とGND間電圧、負荷の75Ωの両端電圧。測定条件0.5V/div.、20μs/div.。映像信号の最も電圧の高い部分は白100%。写真の画質が悪くてごめんなさい。
観測ポイント② (リセット時) |
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もう一つ。測定ポイント②で、ネオファミのリセット時に出力される映像信号。つまり、リセット時にテレビに入力される信号です。測定条件は同じく0.5V/div.、20μs/div.。走査線が長くなっています。
壊しちゃ危ないんですが。私が試した改造情報を簡単に書いておきます。改造のための情報というより、改造を前提としてネオファミを購入する人のための参考情報です(なんのこっちゃ)。もちろん全てのネオファミ内部回路が同じとは限りませんから、改造する場合は個々のネオファミを解析の上で行ってください。
ネオファミ本体を無改造、かつ無電源で、とりあえずビデオ信号を整形する回路です。(注:図の「R1,C1」等の番号はネオファミ内部回路と無関係)
適当なビデオケーブルをぶった切って、これらの電子部品を途中に挟みます。万能基板で組んでも空中配線でも構いません。ただしビデオケーブルの芯線と網線を絶対にショートさせてはいけません。
ビデオケーブルは100円ショップのもので十分です。配線を伸ばすときは、この回路からテレビへの配線を長くします。ネオファミ側の配線は短めに。極端に長くなければ問題無いはずですが。
抵抗は全てカーボン抵抗。コンデンサはC1がアルミ電解、C2はセラミック。抵抗やコンデンサの品質を気にするような回路じゃありません。安価な部品で十分です。
C1は680μFでも1000μFでも大丈夫です。容量を大きくするなら極端な値でなければ問題ありませんが、逆に容量を小さくする場合は最低でも330μFにしてください。C2は必須ではありません。実装に余裕があれば追加します。
R1とR2の抵抗値は変えないでください。抵抗値を不用意に増減すると、ビデオ信号の波形やネオファミの消費電力、そして安全性に影響します。R3は10kΩにこだわる必要は無く、4.7kΩでも22kΩでも問題ありません。
C1に無極性コンデンサを使っているのは、入力と出力を逆に繋いだ場合の保護のためです。無極性が入手できなかった場合には、有極性コンデンサを2個直列に繋いで代用します。しかし、この方法で無極性を得るのはあまり良くないのだそうです。やむを得ず有極性コンデンサ一個で済ませる場合は、ネオファミ側をプラス、つまりR2と繋いだほうをプラスにします。有極性コンデンサ一個で済ませたときは、絶対に入力と出力を逆に繋がないように注意してください。
繰り返しますが、全てのネオファミが同じものとは限りません。ビデオ信号に全く問題の無い製品もあるかもしれません。その場合、この回路は邪魔になります。
ビデオ回路のR3だけあれば、ビデオ信号が出力されます。あとはネオファミ内部に追加回路を入れる場所は十分あります。リセット時に出る奇妙なビデオ信号は、直す方法がわかりませんでした。リセットに連動して無信号に切り替えるくらいしか、解決法を思いつかない…。
プラスドライバー一本で分解と組み立てが可能です。きょう体の足がスポンジ(?)で、奇麗にはがすのが難しい。またきょう体のプラスチックが脆く、ネジ穴の強度に注意が必要です。
ソフトウェアによってはネオファミでも縦縞ノイズが現れます。この場合、C1の容量を増やすと効果がある可能性があります。私の調べたネオファミの場合、C1を1mFにしたとき縦縞ノイズがほぼ消えました。
関係ない余談。この情報をもとに任天堂のファミコンの改造をしても、おそらく無駄です。電源のバイパスコンデンサを増やすとノイズが減るという情報があるらしいですが(情報源はどこなんだ?)、コンデンサをつければ必ず改善するというものではありません。
お手上げ。単純に負荷抵抗をつけて、黒カタマリから出る音声信号を小さくしてみても、音割れは改善しませんでした。音割れする信号は電源電圧いっぱいまで振れています。
ファミコンの音源は、黒いカタマリの中で身勝手に処理されて、一本にまとめて出力されます。中の回路がどうなっているのか想像できませんでした。
カートリッジコネクタの45番と46番が完全にショートしていますが、これは明らかに設計ミスです。45番と46番は絶対にショートさせてはいけません。ディスクシステムの音声異常を作っている大きな原因はこれです。
先ほど書いたとおり、ネオファミ本体との配線は、「電源とGNDと、残り3本」です。スロー機能(スタートボタンの連射機能)の速度変更は可能でした。A、Bボタンの連射速度は固定のようです。また、コントローラコネクタ2に使われていない端子が2本ありました。役割は不明。
『F1レース』の起動不安定は、C1の容量を増やし、かつ7805の出力とGND間(電源スイッチの前)に大容量のバイパスコンデンサを追加すると改善しました。電源OFF直後の電源ONの不安定さは、改善の方法がわかりませんでした。
電流を多く流している割には暗かったり、色が奇麗な青でないかもしれません。私の調べたネオファミでは、LEDがきょう体の壁を照らしていました。LEDの向きを変えると改善します。また、電源スイッチボタンに光を散らすためと思われる半透明のゴムっぽい部品が入っており、これは簡単に取れます。はめ込んでいるだけで、接着もされていません。
7805に放熱器がついていません。また、ディスクシステムを使う場合は電源設計をACアダプタから見直す必要があります。