ファミコンAV化

ファミコンAV化については別ページ「遊びのトランジスタ回路とファミコンビデオ出力化改造」もあわせて読んでください。

注意

電子機器の専門知識が無いまま、以下の記事を真似しただけでは、安全確認は不可能です。改造品ファミコンを他人に譲渡・販売することは、危険です。改造するなら、自分のファミコンを、自分ひとりの責任でやる。感電や発火などの事故が起こらないように、製作と使用、廃棄処分には、細心の注意をする。

見よう見真似で電子部品をハンダ付けすれば安全に動く、というものではありません。閲覧者一人一人が回路を自分で解析して、正常動作と安全を確認してから使用してください。後述するように、テレビに映像を出力するだけでは動作確認できません。

古いタイプのファミコン

その筋の界隈だと「前期型」などと呼ばれているらしい、古いタイプの基板について。

ウチのサイトでは「旧型基板」と呼んでます。どこの誰が前期型とか言い出したのか知らんが、別に私が真似せねばならん義務もないだろ。

回路図

ファミコン旧型基板改造回路図

追加する部品は、Radd1,Radd2,Cadd1の3個。回路図上のその他の部品は、もともとファミコンに実装されている部品です。ファミコン基板のパターンカットや、部品の取り外しはありません。追加のトランジスタやビデオアンプICは不要です。

Narrの設計した改造例のうち最もシンプルな回路ですが、画質はどれも似たようなものです。

部品解説

部品表(旧型基板用)
部品番号 型名・定数 形状・耐圧等 材質等
Radd1 220Ω 1/4W,±5%(赤赤茶金) 炭素皮膜
Radd2 100Ω 1/4W,±5%(茶黒茶金) 炭素皮膜
Cadd1 220μF〜1000μF 6.3V〜16V アルミ電解

Radd1は炭素皮膜抵抗、精度も±5%で十分です。高価な抵抗は無意味。お金の無駄。というか余計に悪い。

Radd2は±1%の金属皮膜抵抗のほうが良いかもしれない。実用上は炭素皮膜でも同じです。炭素皮膜の精度に不安なら、抵抗値を実測して、選別してください。炭素皮膜でも金属皮膜でも、オーディオ用高級抵抗でも、抵抗値が100Ωなら、出力される映像の画質は同じです。

Cadd1はアルミ電解コンデンサ。タンタルコンデンサやOSコンデンサなどは不可。容量は最低で220μFを。実装に余裕があれば1000μFを使ってください。470μFでも330μFでもOKです。容量があまりに少ないと、同期分離エラーなどの不具合を起こします。

その他、配線材やRCAコネクタなどは必要に応じて用意するべし。注意点としては、むやみにシールド線を使わないこと。

抵抗もコンデンサも、故障さえしていなければ、電子部品屋で普通に売っている、安価な部品で必要十分です。

回路の解説

トランジスタ回路の参考書を参照してください。予備知識の無い人がゲーム機改造の情報を参考にするのは、お勧めできません。

私は解説したくないです。ボロを出したくない。

それでも一応、簡単に説明

以下は、電子工学は独学でレベルの低いアマチュアの言うことなので、眉唾で聞いといてください。

ファミコンのビデオ信号出力は、RP2C02の21pinから出力され、2SA937のコレクタ共通回路のベースに接続される。R6,R12で分圧されて2Vp-pになり、RF基板へ繋がってる。このR6とR12の接続点が、基板に「VIDEO」と印刷されているポイント。「VIDEO」からテレビに直結しても、当然うつらない。

この、基板上のコレクタ共通回路を踏まえた上で、外部にビデオ信号を出力する回路を組む必要がある。

今回はシンプルに、基板上のコレクタ共通回路の回路定数を変更して、外部に映像を出力する。2SA937のエミッタで、ビデオ信号は約2.2Vp-p。このエミッタから、75Ω終端で1Vp-pになるように、Radd2の100Ωと、結合コンデンサ220μFを通してテレビに繋ぐ。

これだけでは75Ω終端時にビデオ信号の電圧が高い部分(ファミコンのゲーム画面では、明るく白っぽい部分)が欠けるので、Radd1の220Ωでエミッタ電流を多めに流す。220Ωにより、クリップが改善します。Radd1が無くとも同期信号は取れるので画像は出ますが、全体に画像が暗くなります。

製作例写真

良い製作例じゃないのだけれど、参考までに試作品の写真を。「写真だけ見て、見よう見まねで製作」はやめてください。

ファミコンAV化作例写真01

2SA937のエミッタから220Ωで+5Vに繋ぎ、100Ωをさらにエミッタに繋いで、映像信号の出力コネクタに直付けした220μFへ。

よく見ると基板表面のほうから黒い四角い物体が見え隠れしてますが。これは2SA1015です。製作途中で元々の2SA937を取り外して、2SA1015に交換してしまった。もちろんトランジスタを換えたからといって、画質が良くなるわけでは全く無い(無闇に交換しても不具合の原因になるだけ)。なぜ交換したのか、自分でも忘れてしまった。

ファミコンAV化作例写真02

電源スイッチの辺り。Cadd1は、RCAコネクタに直接に取り付け。

音声について

ファミコンAV化作例写真03

音声の取り出しポイントはここから。4.7kΩの抵抗と22μFの電解コンデンサを直列に通して、出力。さらに4.7kΩで抵抗分圧してレベルを落としてます。

配線は後述の『バックアップ活用テクニック』の記事を参考にしても駄目ではない(良い配線でもない)ですが、『バックアップ活用テクニック』のようにファミコン基板から直接に信号を外部に出力するのは絶対に駄目です。もし音声信号がGNDとショートすると、故障する危険があります。2.2kΩ以上の抵抗と4.7μF以上の電解コンデンサは通してください。下手にトランジスタやICを追加してトラブルを起こすよりは、抵抗とコンデンサだけのほうがいいです。

回路の問題点

RF出力もそのまま使えますが、2SA937に電流を多めに流した関係か、少しだけRF出力の画像の明るさが落ちてます。また、RFとビデオ信号のどちらか一方を使うと、もう一方が少しだけ暗くなったりもする。ビデオ出力を使うときはRFを繋がず、RFを使うときはビデオケーブルを外したほうがいい。

ビデオ信号の出力インピーダンスは75Ωにすべきですが、回路の関係で100Ωになってます。実用上はそれほど問題ないはず。ちなみに、任天堂のAV仕様ファミコンもインピーダンスは75Ωではないようです。

RF出力とコンポジットビデオ出力を同時使用しても、故障はしないと思います。ただし、GNDまわりなどが原因で、トラブルが起きる可能性は否定できない。使わない配線は外したほうがいい。

製作上の注意

上記の製作例は、誰でも安心して使える、普通の家電とは違います。壊れやすいものだと思ってください。

たとえば、写真のタイプのRCAコネクタは手持ちの部品の関係で使いましたが、このコネクタはネジが緩みやすい。ビデオケーブルを付けたり外したりを繰り返すと、簡単にネジが緩む。コネクタが緩むと、内部の配線も動いてしまう。ハンダ付けが外れる。配線がどこかにショートする。ドカーン。

製作例では部品を基板に直結しましたが、別基板を組んでもダメというわけではないです。ただ、別基板にすると、ハンダ付けの数や配線数が増えるし、別基板をどこにどうやって固定するかの問題もある。さらに、電気的にはRadd1とRadd2は2SA937の近くに置かねばならない抵抗だ。これらの理由から、ファミコンの基板に直接に部品をハンダ付けしてます。

繰り返しますが、改造品は、安心して誰でも使えるものではありません。ファミコンを使用中に何か異常が起きたら、すぐに電源を切り、ACアダプタを外す必要があります。

新しいタイプのファミコン

回路

別ページ「遊びのトランジスタ回路とファミコンビデオ出力化改造」を参照。

製作とか回路とか

基本的には、古いタイプの回路と同じ。もともと2SA937のエミッタ抵抗が150Ωと小さめなので、古い基板では必要だったRadd1が不要になります。

「縦縞ノイズ」について簡単に

当ページで解説している改造方法では目視で明らかに分かる縞模様のノイズ、いわゆる「縦縞ノイズ」が見えますが、ファミコンは無改造でも元々こういうものですから、対策する必要はありません。闇雲に部品追加やパターンカットをすると、肝心のファミコン自体の信頼性が犠牲になりますので、改造は最小限にすることをお勧めします。(当ページでは、再現性の怪しい話は控えています。)

縦縞ノイズを改善する手段は無いわけではないですが、噂が一人歩きして検証がされていないのが現状だと思います。強いて挙げるなら、バイパスコンデンサ(電源-GND間のコンデンサ、通称パスコン)の交換と追加ですが、これも安定動作するか分かりません。

パスコンを入れるならば、メイン基板にアルミ電解コンデンサ100μF〜470μF程度を一つ。これだけでは不満なら、ICの近くにあるセラミックを積層セラミック0.1μFに交換する、までに控えましょう(パスコンは一般に、積層セラミックが高周波領域を担当して、アルミ電解が低周波領域を担当する、というのが定番です。)。

「ノイズ対策」は安定動作が大前提です。ビデオ画像の見た目の美しさを求めすぎずに、最小限の改造で済ませることを強くお勧めします。

『バックアップ活用テクニック』のファミコンAV化

『バックアップ活用テクニック』の回路

三才ブックスの『ゲームラボ』という雑誌の前身『バックアップ活用テクニック』で、ファミコンAV化改造が、複数回掲載されました。そのうちの一つ、総集編の記事を検討してみる。当時、雑誌を本屋で定価で買ったんだから、検討くらいしてもいいだろ。

バックアップ活用テクニック総集編 ファミコンAV化 図面バックアップ活用テクニック総集編 ファミコンAV化 写真

まず図面。筆者が使ったファミコンがどのような回路なのか、読者にはわかりようがないのだけれど、この実体配線図や、記事の写真を見る限り、改良型(後期型)の基板だ。

オシロスコープの波形写真などは無し。回路図と実体配線図、簡単な製作の解説のみの、3ページの記事。

ファミコンAVセンターはファミコン本体のバージョンチェンジ(コピー対策などで定期的にファミコン本体内部の回路を少しずつ変更していくこと)によりごくまれに画面が明るすぎたり、暗すぎたり、はたまたラスタースクロールがかかったように画面がゆがんでしまうものがひょっとしてあるかもしれません。

もし自分が所有しているファミコンが上記のようなファミコンの場合は、なんとかして自分で回路を改良するか、最悪(初期型のファミコンや一時期市場に出回ったニセもの)の場合、ファミコンのAV化を泣く泣くあきらめなければならないような結果になるかもしれません。1台1台調べようにもなにしろ国内最高生産台数を誇るファミコンですから不可能に近いものがあります。この点をご了承ください。

ちなみにこちらで実際に回路を組み込んでチェックした2台のファミコンは私が3年前、カメラのさくらやで新品で買ったものと、この原稿を書いている2日前に秋葉原のソフマップで買ってきた新品のものです。

なおこの2台のロットナンバー(製造番号のこと。見方によってはバージョンチェンジの目安になる)が全く違うものの両方ともぜんぜん問題なく動いてくれました。念のため参考までによろしくお願いします。

「バージョン違いについて」を引用。要するに、筆者のテストした2台のファミコンでは問題なく動作したが、読者のファミコンでも動作するとは限らないし、読者のファミコンがどんな回路になっているかは確認が不可能だから、読者のファミコンは読者がなんとかしろ、ということらしい。

「ぜんぜん問題なく動いてくれました」というので、試作してみた。

試作と波形測定

入出力波形
ロードランナー(1V/div)
ロードランナー波形ロードランナー波形

オシロスコープでの波形写真。上の波形が、2SC1815のベース電圧での波形。下がテレビに入力された波形。簡単に言い換えると、上が本来のファミコンのビデオ信号で、下が実際にテレビに入力された波形です。

ゲームソフトはハドソンの『ロードランナー』。タイトル画面とデモ画面だったと思います。どっちがどっちだったかは忘れた。正常動作時の画面は任天堂ホームページのバーチャルコンソール版を参照。

テレビ画面を目で見た限りでは、確かに「ぜんぜん問題なく動いて」いるように見えました。しかしオシロスコープで波形を見れば不具合があるのは一目瞭然で、同期信号が浅くなっている上に、映像信号がオーバーレベルしてます。本来は、テレビに繋いだときに、波形の上下幅が1V(写真では格子ひとつ分)にちょうど収まる必要があります。

入出力波形とテレビ画面
星のカービィ 夢の泉の物語(1V/div)
星のカービィ 夢の泉の物語 波形星のカービィ 夢の泉の物語 テレビ画面

『ロードランナー』ではテレビ画面を見ても正常であるかのように見えても、別のソフトではどうだろうか、ということで試したのがこれ。任天堂の『星のカービィ 夢の泉の物語』。正常動作時の画面は任天堂ホームページのバーチャルコンソール版を参照。

同期信号が見事に潰れてしまい、テレビが同期信号を検出できなくなって、「ラスタースクロールがかかったように画面がゆがんで」しまっている。

間違いである確証は無いが、問題なく動いたデータも無い

「バージョン違いについて」にあるように、雑誌記事に使われたファミコンは、Narrが試作に使ったファミコンと回路が異なる可能性はあります。その場合は、記事の回路で動作するかもしれない(2SC1815に入力するビデオ信号の電気的特性によっては、動作しない回路ではない)。しかし、雑誌記事には、改造に使ったファミコンの回路やビデオ信号の波形は、一切掲載されてません。

結論としては、「記事が正しいか間違っているか、はっきりしたことは、わからない」としかいえない。記事の回路が動作するというデータは提示されておらず、どのように動作確認したのかも不明であり、記事の筆者が「ぜんぜん問題なく動いてくれました」と言っているだけ。Narrの追試でも、動作確認できなかった。

ゲームの改造雑誌で、しかも3ページしかないから、詳細な解説が省略されるのは仕方ないわけだが。

別回路での正常動作例

入出力波形
星のカービィ 夢の泉の物語(1V/div)
星のカービィ 夢の泉の物語波形

比較対象として、別ページ「遊びのトランジスタ回路とファミコンビデオ出力化改造」に書いた、改良型基板(後期型)ファミコンのC34とFC2の交点(2SA937のエミッタ)に、100Ωと220μFを直列に繋ぐだけの回路の波形。信号レベルがほぼ1Vp-pになり、同期信号も潰れていない。

ちなみに、当ページで写真を掲載した、旧型基板に抵抗2本とコンデンサ1個を追加するだけの回路でも、同じ波形が得られます。

昔から噂話があるファミコンですが、「前期型ファミコンのAV化ではビデオアンプ回路を追加する必要がある。トランジスタやICを追加しなければならない。でなければ画面が暗くなる」なんてことはないです。

おそらくは、過去にファミコンAV化に挑戦した人の多くが、まずは基板上の「VIDEO」からテレビに直結したのだろうと思います。直結したら映像が暗かったので、「弱い信号を強くしてやればいい」という発想から、エミッタフォロワを追加したら明るくなった。その結果、「ファミコンにはアンプが入っていない。2SC1815のエミッタフォロワを追加すればいい」という噂が広まったんだろう。

トラブルの原因は、ファミコンの個体差ではない

Narrはおそらく、この雑誌記事に使われたファミコンとNarrが試作に使ったファミコンは、ほぼ同じ回路だろうと推測してます。

Narrの想像だけれど、おそらくこの記事の筆者と編集部は、テレビに改造ファミコンを接続してゲーム画面が表示されたことをもって、動作確認ができたと考えてしまったんだろう。

最初に言ったように、『バックアップ活用テクニック』ではファミコンAV化の記事が数回掲載されてます。そのたびに、読者から不具合が報告されたのだろう。筆者と編集部は、編集部のファミコンでは動作確認できたものと考え、これをファミコンの「個体差」が原因であるものと勘違いしたのではないか。

コンポジットビデオ信号は、画像の状態によって波形が常に変化しています。暗い画面なら電圧が低く、真っ白で明るい画面なら電圧が高い。『ロードランナー』は暗く黒っぽい画像で、『星のカービィ』は明るく白っぽい。ビデオ信号を伝送する場合、画面が明るくても暗くても、チカチカと点滅しても、画面に明るい部分と暗い部分が混在していても、同期信号が潰れないように伝送する必要があるわけです。

『バックアップ活用テクニック』の回路で使われている2SC1815のコレクタ共通回路は、設計を誤ると、出力波形の電圧が低い部分、つまり同期信号部分が失われます。映像信号は画面の状態によって波形が大きく変わるから、『ロードランナー』であれば欠けなかった同期信号が、『星のカービィ』では欠けてしまう、という現象が起こる。

もし、改造したファミコンのテストに『ロードランナー』のような暗い画面のゲームだけを使っていたならば、同期信号が潰れても少しは残ってます。同期信号が正常値の0.3Vだろうと、異常値の0.2Vだろうと、一部のテレビは頑張って、浅くなった同期信号を検出してくれます。その結果、あたかも正常に画像が表示されたかのように見えてしまう。ところが、『星のカービィ』のようなゲームでは、同期信号が完全に潰れてしまい、テレビが同期信号を検出できなくなって、画像が乱れて、不具合が発覚する。

これがおそらく、「実際に回路を組み込んでチェックした2台のファミコンは〜両方ともぜんぜん問題なく動いてくれました」「ファミコン本体のバージョンチェンジによりごくまれに画面が明るすぎたり、暗すぎたり、はたまたラスタースクロールがかかったように画面がゆがんでしまうものがひょっとしてあるかもしれません」の実態だろう。

テレビは測定器ではないです。「テレビに接続したら、画像が表示されたように見えた」だけでは、動作確認にも安全確認にもならない。

引用した資料