モデル接着

概要

残されたバグ

『ポリゴンスタジオ』のサンプル作品には、ユーザが使えない機能を使った作品が数多く含まれます。これもその一つ。ポリスタのモデリングにおける、「モデル数」の定義を変えるものです。別ページ「サンプル3D作品データ」にある、「接着数」のパラメータがそれ。

説明書的なモデル

「モデル」って何でしょうか。通常は「繋がったポリゴンの集団」です。例えば立方体一個とか、球一個とかです。この画像なら3モデル。

接着モデル例

しかしこのルールが通じないものがあります。例えばこちら。

ポリスタが扱えるモデル数は最大30です。しかし立方体が64個あります。また画像からはわかりませんが、ポリスタはこれら全てをまとめて1モデル扱いしてます。こういったモデルは、通常のポリゴン操作では作ることができません。

これはどうやって作るのか。また、どんな利用価値があるのか。なぜ通常の操作では作れないと断言できるのか。

まず触ってみる

『ビル』からもぎ取ったモデルを加工したもの

まず、実物を触ってもらうのがよいかと。「サンプル3D作品データ」の中で、接着数が1以上の作品なら、どれでもいいですから見てください。ここでは『ビル』を例にします。

モデル前方の下部、ビルの入口にある、直方体を3段重ねにしたモデル。これが接着されたモデルです。(これだけ残して他は消去しても構いません。)一見、繋がった1モデルのようですが、点か線、面を移動してみると、3つの直方体は繋がっていないことが分かるはずです。この画像は、これを加工して見やすくしたもの。

全体が黄色いのは、これらが1つのモデルであることを示しています。モデルエレメントで直方体1つだけを選択しようとしても、直方体3つが選択されるのです。

ここで「モデル数」の定義を変える必要があります。今まではこうでした。

旧定義 (モデル数)=(繋がったポリゴンの塊の数)

説明書的なモデルの概念図

立方体が2つあれば、それは2モデルです。こんな感じでモデル数を数えてました。しかし今は違います。

新定義 (モデル数)=(ポリゴンの集団の数)

接着を導入したモデルの概念図

今までは、一つの塊が一つのポリゴン集団を形成していたから(モデル数)=(ポリゴン塊の数)であったに過ぎません。実際はこのようになっていたと考えられます。

接着の概念例

2つの立方体で1モデルの場合はこんな感じ。

接着の概念で見直す

この考え方で先ほどの『ビル』からもぎ取った画像を見直すと、こんな感じ。このサイトでは、これら全体を[モデル]もしくは[モデルエレメント]。[モデルエレメント]を構成する一つ一つのポリゴンの塊を[モデルパーツ]と呼びます。この場合はモデルエレメント数1、モデルパーツ数3、接着数2。

モデラー制作画面に表示される[モデル数]は、ここでいう[モデルエレメント]の数です。1モデルエレメント内に、モデルパーツが1個の場合、ポリスタ説明書でいう「モデル」と同じになります。ポリスタ説明書の記述は特殊例です。

基本的な使い方

使い方の説明。基本は、任意の2モデルをポリゴン構成を全く変更せず1モデルにまとめること。以下、手順。

画像 作業手順
ポリゴンモデル接着剤

まず、「接着剤」を用意します。サンプル作品のなかから適当に選んでください。接着モデルがある作品ならどれでも構いません。お勧めは『コミュニケーションキット』のサンプル作品『ケーキ』。これのみペーパークラフトモードでも使えるからです。ケーキに乗っている家のモデルが接着モデル。これを接着剤にします。他は消去。今後は全ての3D作品をこれから作ります。こんなカタチでセーブしておくと使いやすい。

接着の手順1

作品製作の際は、接着剤そのものを変形して作るのではなく、今までどおり基本モデルを呼び出して加工してゆきます。

例えばこの「A」と「B」を接着して1モデルにしたいとき。まず接着剤をモデルエレメントでコピー。つまりオリジナルの接着剤は残してコピーを使います。

線で囲った範囲が、それぞれ1モデル。全体で3モデル。

接着の手順2

まず接着剤の一つと「A」を、面エレメントで「つなげる/トンネル」。これで「A」と接着剤が同一モデルになります。全体で2モデル。

接着の手順3

次に、もう一方の先ほど「つなげる/トンネル」をしなかった方の接着剤と、「B」を面エレメントで「つなげる/トンネル」。これで全体が1モデルになりました。

ここで現状確認。「A」と「B」は同一モデル、かつ繋がっていません。

接着の手順4

元々接着剤を構成していた頂点を、全て点エレメントで消去。これで完成。「A」と「B」は同一モデルになり、さらに接着前とポリゴン形状に全く変化がありません。

この手順を繰り返せば、任意のモデルを自由に接着できます。

接着モデルの癖

1.モデルエレメントの拡大・縮小と回転

モデルエレメント拡大・縮小
縮小前 縮小後
画像 拡大・縮小前 縮小後
モデルエレメント回転
回転前 回転後
画像 回転前 回転後

黄色の花が接着されたモデル。白い花は無接着モデルです。複数の無接着モデルパーツで構成された作品を拡大縮小・回転すると、全体の形が崩れます。接着されたモデルなら、形が崩れずに拡大縮小・回転されます。

2.モデルエレメントの全消去

接着状況 消去前 消去後
画像 接着された立方体2個 立方体1個だけ消去しようと面エレメントで消去を試みる 立方体が2個とも消える
解説 黄色の立方体2個が
接着されたモデル
立方体を1個だけ消去しようと
面エレメントを消去すると…
全部消えてしまう。

例えばこの接着モデルの場合、立方体一つだけ消去しようと面エレメントを消去すると、片方の立方体が消えると同時に接着された立方体も消去されます。「作れない形」と判断されるようです。

消去前 消去後
画像 点エレメントで立方体を1個だけ消去を試みる
線エレメントで立方体を1個だけ消去を試みる
立方体が1個だけ消える
解説 点エレメント、
または線エレメントを消去。
立方体1個だけ消える

点エレメントまたは線エレメントで消去すると上手く消えてくれることもあります。しかしアテになりません。確実に消去するには別の方法がおすすめ。

3.接着行為の不可逆性

基本的に、一度接着されたモデルは犬のチカラを借りる以外に、元の接着されていない状態に戻すことはできません。実用上は条件を満たせば復元可能。その条件は後述。

4.モデルエレメントの着色

着色前 着色後
画像 立方体1個だけモデルエレメントで色の塗りつぶしを試みる 二個の立方体が塗りつぶされる
解説 大きな立方体2個が接着された1モデル。
そのうち1個をモデルエレメントで塗りつぶすと…
2個ともに塗りつぶされる。

接着モデルにモデルエレメントで【ぬりつぶし】をすると、たとえポリゴンが繋がっていなくても、全体が一つのモデルとして塗りつぶされます。例えば片方の立方体を塗りつぶすと、もう一つの立方体も同じ色に塗りつぶされます。

5.その他エレメント操作

基本的に、点・線・面エレメントの操作は無接着モデルと同じです。

6.質感

質感変更前 質感変更後
画像 質感変更前 質感変更後
解説 黄色の花は全体で1モデル。
白い花は6モデルで作られている。
黄色の花は全体で同じ質感になる。

一つのモデルは全て同じ質感になります。つまりポリゴン同士が繋がっていなくても、同一モデルのポリゴンは全て硬質感か柔質感になります。

7.安定性

私の経験上、接着そのものが原因でポリスタが不安定になることはありませんでした。他の特殊操作と組み合わせた場合にフリーズすることはあります。そこに注意できるなら実用上の信頼性は十分あります。

現在、確認されている、モデル接着と組み合わせて不安定になる特殊操作は「2ポリゴンの板」です。頂点数を極端に増やすとポリスタが不安定になります。